大洗町の冬の名物といえば「あんこう鍋」。
その「あんこう鍋」の元祖と言われている鍋があるという。
「どぶ汁」。
茨城県北部の漁師たちが船上で、水を使わないでアンコウと野菜、味噌だけで作った鍋。
鍋ブームが到来し「どぶ汁」を商品化しようとしたものの手間や技能が必要と断念。
そこで考えられたのが、肝煎りや水分を出すための時間を省き、割り下で煮立てるだけで作る現在の「あんこう鍋」。
「あんこう鍋」を食べさせてくれるお店は大洗町を始め茨城県内に数多くありますが、水や割り下を一切入れない本来の「どぶ汁」を食べさせてくれるお店はごくごく一部とのこと。「どぶ汁」は高価で幻の料理と言われています。
今回その「どぶ汁」を生まれてはじめて頂ました。
宇都宮から北関東自動車道を使って車で約一時間。大洗町の住宅地の一角にお店がありました。
「ご馳走 青柳」。
ナビを頼りに到着するも、そこは普通の一軒家。

玄関先に「鮟鱇 どぶ汁」と書かれたノボリがなければ、気が付かず通り過ぎていたかも。
昼間と夜間とでは置ける駐車場所が違いますのでご注意ください。(一番下のマップ参照のこと)

「どぶ汁」の提供は、11月から3月末日までの冬季限定。
完成するまで鍋と付きっきりで対応するため、昼営業・夜営業とも一回転しか予約を取らないのだそうです。
よって土日などのいい日はすでに今季の予約は終了しているとのこと。
今回も数ヶ月前から予約を入れ、めでたくこの日を迎えることが出来ました。

通された続き間の部屋には、大きなテーブルが二脚。
奥のテーブルを使わせてもらいました。
私達の鍋が終わる頃にもう一組のお客さんが来店。
重ならないよう予約時間をずらしているのかもしれません。

今回お願いしたのは「あんこうどぶ汁コース・鮟肝付き」11000円。
まずはさっぱりと「サラダ」。
間を空けず店主が登場。早くも「どぶ汁」の調理が始まりました。

大洗ホテルで料理長を勤め上げた店主が丁寧に説明しながら、目の前のお鍋で「どぶ汁」仕上げていきます。
まさに「シェフズテーブル」を思わせる特別の席。私達の質問にも優しく答えてくれました。
「種も仕掛けもありません」とマジシャンが告げるかのように、カラの鍋を私達に向けて説明開始。
鍋の中には水も割り下もありません。

生の「アンコウの肝」をお鍋の中に。
肝煎りという作業で、あん肝を鍋で空煎りしていきます。

手を休めることなく焦げないようアンコウの肝をヘラで煎っていきます。
熟練された手さばき、私達ならこの作業だけで音を上げてしまうかも。

肝から出た肝油(かんゆ)で、オレンジ色したペースト状に変身。
ここまで来るの、結構な時間を要しました。

その間に二品目の「鮟肝」。
普段口にする鮟肝とは全く違う。くさみもクドさも皆無。
クリーミーな舌触り、綺麗な旨味で満ちてます。

三品目は刺身の盛り合わせ。
ヒラメ、タイ、しめ鯖、ホッキ貝、帆立に甘海老。
「どぶ汁」の調理風景を眺めながら、海の幸に舌鼓。

一杯目の「生ビール」から、大洗町産 紅あずまで作った本格芋焼酎「大洗」をロックや水割りで。
お酒も含めて地産地消というのも珍しい。

「アンコウの七つ道具」とは、「肝」、「ぬの」と呼ばれる卵巣、「えら」、「ひれ」、「皮」、胃である「水袋」、そして「身」。
骨・あご・眼球以外は残すところがなく食べられると言われています。
先程使ったのた「肝」以外の部位を次々と入れていきます。
地元で採れた生のアンコウの「皮」、そして尾の部分の「大身」。
プルプル感が、見た目からも伝わってきます。

よく煎られた肝と混じり合い、これだけで食べても美味しそう~。
少しずつ完成に近づいていきます。どんな味わいななんだろうと、想像しながら待つ時間も愛おしい。

白菜などのたっぷり野菜のほか、「卵巣」「水袋」「えら」「ひれ」、そして火入れした「肝」を入れていきます。
そう、「卵巣」があることから食用になるのはメスのみ。オスは大きくても10~20センチ程度しか成長しません。

あんこうと野菜から水分が抽出され汁が満ち、鍋らしく変わっていきます。
汁の表面にはオレンジ色した「肝油(かんゆ)」が浮かんできた。
この濁りが酒の獨酒を連想させ、「どぶ汁」と言われるようになったという説が有力だとか。

茶碗に入った味噌を少しづつ汁に溶かしていく・・・。
聞くと、創業100年以上、茨城県笠間市の老舗味噌醸造所の手作り味噌。
「どぶ汁にはこの味噌に限る」と店主。ひとつひとつにこだわりを感じます。

少しづつ、少しづつ。
味噌の分量を加減しながら最適化な味わいに。
その都度小皿に汁を取り分け、自分の舌で確かめていく。

ついに「どぶ汁」の完成です。

薬味やつけダレはいらない。
練ごまが入っているような濃厚な口当たり。意外にもサッパリとしていて、軽快に箸が進む。
クドくなく、普通のあんこう鍋より食べやすく感じました。

塩分添加は味噌からのみ。お陰でいくら食べても喉が渇かない。
血圧高めの私達には、すごくありがたいお鍋。
競い合うようにお代わりして、四人で綺麗に美味しく頂ました。

「あんこうの供酢」
ゆでたアンコウを肝入りの酢味噌につけて食べる茨城県の郷土料理。
今回出されたアンコウの部位は、「えら」と「ひれ」以外の5つ。

「供酢」と言われるあんこうの肝いり酢味噌がうまいのなんの!!
わかめを付けて頂くだけで酒の肴になりました。

「あんこうの唐揚げ」
熱々唐揚げを手づかみでがぶり。骨の周りの身がとくに美味しい!!
どぶ汁の時にも感じましたが、下処理がしっかりされているのでアンコウが非常に食べやすい。

「どぶ汁のおじや」。
鍋の汁にご飯と卵を入れ、よ~くかき混ぜていきます。

汁を十二分に吸ったご飯。
米粒が崩れとろ~リ粘度が増すまで、手を休めず混ぜていきます。

この「おじや」が絶品!!チーズリゾットや濃厚なポタージュのような口当たり。
アンコウと野菜のエキスがギュッと詰まっており、驚きの美味しさ。
これがまたまたお酒の肴になってしまいました。

地元、大洗町の地酒「月の井」の冷酒を頂き、おじやで一杯!!
うまい!!

温かいお茶、そしてフルーツを頂きご馳走様。
アンコウを知り尽くした店主が作る「どぶ汁」。
この歳で初めての味わいと出会え、幸せな一夜になりました。
○「ご馳走 青柳」住所:東茨城郡大洗町東光台3-22
電話番号:029-352-3520
定休日:火曜日(年末年始休暇 2021/12/30~2022/1/2)
営業時間:昼の部11時30分~14時、夜の部17時30分~21時(L.O)
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